防災学習の証明を避難所受付へ、飯塚市DID実証が示した24秒と運用の壁

56問の継続学習と本人確認を一枚のVCで接続。手書き151.06秒に対し認証68.96秒、うち約45秒は表示操作に費やした。

発表企業:渋谷Web3大学株式会社

種別

実証実験

注目する理由

成功値だけでなく操作時間、基幹連携、マイナンバーとの差まで公開し、次の実装条件を具体化した完了実証として評価した。

平時の学びを有事の本人確認に使う

渋谷Web3大学、かんがえる防災、Turing Japanの3社は、福岡県飯塚市で2025年12月から2026年3月にDID/VCを使う防災実証を行い、42ページの終了報告を市へ提出した。防災クイズの参加・修了を示す検証可能な証明書を、災害時には避難所受付の本人確認にも使う「一つの証明書、二つの価値」が中心構想だ。

非常時専用アプリは、いざという時に操作を忘れたり端末から消えたりしやすい。8週間、全56問の正解を置かないクイズを日常的に配信し、参加証、前半修了証、修了証を段階的に発行した。普段から触れる学習体験へ認証手段を埋め込み、利用者と自治体職員の習熟も実証範囲に含めた点が重要である。

151秒を69秒へ縮めても、認証は24秒だった

第1回では事前に30人へ証明書を発行し、27人が避難者役として手書き受付とDID/VC認証を同条件で試した。手書きは151.06秒、DID/VCは68.96秒だった。デジタル側の内訳は認証24.11秒、証明書表示31.44秒、メールを探す時間13.41秒で、純粋な検証より画面を用意する操作に時間がかかった。

避難所側は専用アプリを必要とせず、ブラウザとスマートフォンのカメラで真正性を確認した。取得情報も市との協議で氏名、住所、生年月日の3項目に絞った。ただし小規模なロールプレイの平均時間であり、通信障害、端末の電池切れ、高齢者や外国人、家族単位の受付を含む災害現場の処理能力を示すものではない。

基幹台帳につながらなければ入口で止まる

実証側は、避難所受付を本当に変えるには自治体の基幹システムや管理台帳との連携が必要だと明記した。本人確認が速くても、その後に人数、配慮事項、物資配布、避難先移動を別の紙へ転記すれば全体は効率化しない。発行主体、失効、情報更新、重複登録の処理を災害業務の中で定義する必要がある。

また、一般的な本人確認ではマイナンバーカードと競合する。VC固有の価値を、外国人の受付、災害ボランティアの資格、事業者証明など、行政の単一IDだけでは扱いにくい属性へ絞れるかが次の論点だ。IOTAと東芝のコンソーシアム型基盤を同日に試したが、方式比較では費用、停止耐性、運用主体も示す必要がある。

速度より、備えと受付を継続できるか

成果を追うなら認証秒数だけでなく、クイズの継続率、証明書をすぐ表示できた割合、誤認証と再発行、職員の訓練時間、紙へ戻った件数を見るべきだ。通信が切れた場合のオフライン検証、端末を持たない人の代替手段、個人情報を最小化したまま支援へつなぐ方法も、次回実証で確かめたい。

飯塚市は次年度も先端情報技術実証の枠組みを続け、3社は個別避難計画、ボランティア、事業者、防災学習資格への応用を仮説として挙げる。技術名を市民に覚えてもらうことより、平時の学びが続き、非常時に迷わず提示できる運用をつくれるか。今回の公開データは、その改善を測る基準線になる。

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