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低温排熱でCO₂を回収へ、日本ゼオンとJCCLが吸収剤の量産・装置大型化を共同開発

九州大学発スタートアップの吸収剤・装置技術に、日本ゼオンの材料設計と量産技術を組み合わせる。40〜60度の低温蒸気を利用できる回収方式を、研究開発から産業設備へ移す。

BY 日本ゼオン株式会社

FOR

低温排熱を持つ工場や発電・産業設備など、排ガスからCO₂を分離回収したい事業者

TYPE

pilot

WHY IT MATTERS

スタートアップの材料・プロセス技術と大企業の量産能力を接続し、CO₂回収のコストを左右する吸収剤と装置を同時に拡大する点に注目した。性能値と導入案件は今後の確認が必要だ。

吸収剤と回収装置を同時に拡大

日本ゼオン株式会社と九州大学発スタートアップの株式会社JCCLは、CO₂分離回収製品の共同開発を開始した。JCCLが開発する吸収剤の性能向上と量産技術、回収装置の大型化に取り組み、産業現場での早期実装を目指す。

JCCLは、材料開発、性能評価、装置開発、プロセス設計を一体で手がける。日本ゼオンはポリマー事業で培った材料設計と量産化の技術を提供する。研究室での性能だけでなく、材料を安定供給し、必要な処理量を持つ装置へ拡大する工程が共同開発の対象となる。

40〜60度の熱で吸収剤を再生

化学吸収法では、排ガスからCO₂を取り込んだ吸収剤を加熱し、CO₂を脱着して再利用する。再生に必要な熱が大きいほど、回収設備の運転費と追加排出が増える。JCCLの方式は、40〜60度の低温蒸気を供給してCO₂を脱着できるとしている。

工場などで使われずに捨てられている低温排熱を利用できれば、回収のために新たに用意するエネルギーを抑えられる。温度を上げず、低圧蒸気でも回収できる点も、既存設備への導入可能性を広げる要素になる。

ディープテックの量産の壁を越える

CO₂回収材料は、実験室で高い性能を示しても、量産時の品質、耐久性、原料費、交換頻度が事業性を左右する。処理量を増やした装置では、排ガスの条件変動や熱・物質移動も性能に影響する。材料と装置を別々に最適化するだけでは商用設備へ移しにくい。

今回の組み合わせは、JCCLの専門技術に日本ゼオンの材料量産能力を接続するものだ。日本ゼオンにとっては、中期経営計画で成長分野に定めるGX領域へ新たな事業機会を作る取り組みでもある。

回収コストを判断する数字は未公表

発表では、吸収剤1キログラムあたりのCO₂吸収量、再生に必要なエネルギー、繰り返し利用できる回数、装置の処理能力、目標価格は示されていない。従来方式と比較した総回収コストや、どの濃度の排ガスを対象にするかも今後の確認事項となる。

社会実装には、回収したCO₂の輸送、貯留、利用先も必要だ。回収工程だけを低コスト化しても、後工程を含むサプライチェーンが成立しなければ導入は広がらない。最初の実証先と用途が、製品の市場を具体化する。

LAUNCH TRACEの視点

この共同開発は、大企業によるスタートアップ支援ではなく、材料と装置の技術を量産事業へ変換する役割分担として見るべきだ。低温排熱を使える回収方式が成立すれば、これまで熱コストを理由に導入できなかった排出源にも対象を広げられる可能性がある。

ただし、現時点は共同開発の開始段階である。吸収剤の寿命、回収量、設備規模、1トンあたりコスト、最初の顧客が示された時点で、技術協業が事業へ進んだかを改めて評価したい。

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