← ALL ARTICLES
TRACE 0017SCORE 100

中古太陽光パネルを環境価値へ、Linkholaと浜屋がフィリピンでクレジット創出に着手

日本で回収・検査した太陽光パネルをフィリピンの事業所で再利用し、発電による排出削減をボランタリークレジットにつなげる。廃棄物、導入コスト、脱炭素投資を一つの事業モデルで解こうとする試みだ。

BY 株式会社Linkhola

FOR

フィリピンをはじめとするASEAN地域に工場・事業所を持つ企業、太陽光パネルのリユース・流通事業者、脱炭素投資を支援する金融機関

TYPE

pilot

WHY IT MATTERS

設備の再利用だけでなく、検査・流通・発電・環境価値を一つの収益機会に組み直す点に注目した。方法論は策定中であり、クレジットの発行量や採算性は今後の検証を待つ必要がある。

日本の中古パネルをフィリピンの電源に変える

株式会社Linkholaとリユース事業を手がける株式会社浜屋は2026年8月25日、日本で回収・検査した中古の太陽光発電パネルをフィリピンへ輸出し、事業所向けの自家消費型発電に再利用するプロジェクトを始めたと発表した。発電による排出削減をカーボンクレジットとして認証するため、新たな算定方法の策定と第1号案件の組成を進める。

クレジットの申請、審査、発行には、Linkholaが運営する民間のボランタリークレジット制度「EARTHSTORY」を利用する。浜屋が持つパネルの回収・検品・流通網と、Linkholaの制度設計・運営機能を組み合わせる形だ。方法論の完成後にEARTHSTORYへ登録し、具体的なクレジット創出案件へ移る計画で、現時点では実証・制度開発の段階にある。

廃棄、導入費、追加性という三つの制約

このプロジェクトが同時に扱う課題は三つある。日本では2030年代半ば以降、交換や耐用年数の到来によって太陽光パネルの排出量が増えると見込まれる。その中には、検査すればまだ発電できるものも含まれる。再資源化の前に製品として使い切る流通経路を作れれば、廃棄を遅らせながら設備の利用期間を延ばせる。

一方、電力需要が伸びるフィリピンなどでは、電気料金と再エネ設備の初期投資が事業者の負担になる。中古パネルで導入費を抑えられれば、自家消費型発電の選択肢を広げられる可能性がある。さらに、新設太陽光によるクレジットは、クレジット収入がなければ事業が成立しないという「追加性」の説明が難しくなっている。リユース設備の流通と導入をクレジットが後押しする構造を示せるかが、新方法論の中核になる。

一枚のパネルに三層の価値を重ねる

事業設計として興味深いのは、中古パネルを安く販売するだけではない点だ。回収した設備には、再利用によって廃棄を回避する資源価値、導入先の購入電力を減らす発電価値、排出削減量を認証して取引する環境価値という三つの層が生まれる。検査結果や流通経路を追跡できれば、中古品の品質に対する不安や不適切な輸出・廃棄のリスクを抑える材料にもなる。

参加者も複数の産業にまたがる。リユース事業者には新しい販路と検査収入、現地の事業者には電力コスト削減とScope 2対応、発電事業者にはクレジットという追加収益、金融機関には説明可能な脱炭素投資の対象が生まれうる。EARTHSTORYは各社をつなぐ制度基盤となり、クレジットの創出から販売までを支援する構想を掲げている。

方法論と採算性はこれから検証される

発表時点では、排出削減量の具体的な算定式、対象設備の要件、二重計上を防ぐ仕組み、クレジットの想定価格は公表されていない。パネルの輸送に伴う排出、残存性能と故障率、設置後の回収・処分までをどのように評価するかも、環境価値の信頼性を左右する。Linkholaと浜屋は専門家や有識者の意見を取り入れ、科学的根拠に基づく方法論を策定するとしている。

事業として成立するかは、安価な新品パネルと比べた総導入費、検査・輸送・施工を含むコスト、発電期間、クレジット収入の分配によって決まる。中古設備の価格優位だけでなく、品質保証と追跡の費用を含めても導入側に利益が残ることを、第1号案件で示せるかが重要になる。

LAUNCH TRACEの視点

今回の取り組みは、余っている設備を需要地へ移すだけのリユース事業ではない。設備の来歴と性能を記録し、発電実績を環境価値へ変換することで、従来は処分費用になり得た資産に複数の収益源を持たせようとしている。循環経済と脱炭素を理念で結ぶのではなく、異なる参加者の経済的な動機を設計しようとしている点を評価したい。

ただし、「国内初」は両社による2026年8月時点のウェブ調査に基づく表現であり、プロジェクトはまだ始動段階だ。方法論の承認、第1号案件の設備規模、実際の発電量、クレジット発行量、購入者と価格が明らかになって初めて、モデルの再現性を判断できる。日本の中古設備をアジアの脱炭素投資へつなぐ市場が立ち上がるのか、今後の数字を追跡したい。

READ PRIMARY SOURCE ↗